<感想掲示板>

*こちらの掲示板は、弊社出版書籍の感想を投稿する掲示板です。

*本のタイトルをクリックし、返信欄に感想をご記入ください。

*新規スレッドの作成はご遠慮ください。

*誹謗・中傷など不適切な書き込みは予告なく削除します。


一覧 Home ワード検索 使い方 携帯へURLを送る 新規投稿 管理
『クトゥルー短編集 銀の弾丸』(山田正紀)
皆様のご感想をお待ちしております。
  • クトゥルー@創土社
  • 2017/12/05 (Tue) 00:24:11
返信フォームへ 
オリジナリティとバラエティに富んだCthulhu Mythos。
●「銀の弾丸」
「神狩り」の作者ならではの衝撃的な作品。Lovecraftの「Call of Cthulhu」は、実は或る真実を元にしていたと云うそColin Wilsonの「The Mind Parasites」や「The Philosopher’s Stone」のタイプのCthulhu Myth。
●「おどり喰い」
南極の古き者の真実が又、一つ・・・こいつら滅んでいなかったのか。まあ、Cthulhuと五分に渡り合っていた連中だからなあ。「狂気の山脈にて」では哀れを催す感じの描かれ方だったが、実はこんな風に生き延びて暗躍していたのか。まあTim Curranの書いた「狂気の山脈にて」の続篇でも、こいつらひどかったからなあ。
●「松井清衛門、推参つかまつる」
カドカワの怪獣小説アンソロジー「怪獣文藝」に寄稿されたクトゥルー神話と云うより、ウルトラマン第三話「科特隊出撃せよ」の前日譚?
「科特隊出撃せよ」で電気を吸収すると姿を見せる透明怪獣ネロンガはその昔、侍に退治されて井戸に落とされた筈と成っていたが、その話。但し発表当時、円谷プロの許可を得ていた訳では無いらしくネロンガはバロンガと名前を変更されていたが、元ネタがウルトラマン第三話である事は主人公の相棒の名前を見ても明らか。又、バロンガはネロンガが本編で見せなかった電気の応用技を発揮。ウルトラQとウルトラマンは「ペギラが来た」「バルンガ」「2020年の朝鮮」「ゴーガの像」「バラージの青い石」「ミイラの叫び」「無限へのパスポート」「悪魔はふたたび」「来たのは誰だ」など元々クトゥルー神話的な作品が多く、そのスピンオフ的オマージュである本作も又クトゥルー神話に無理無く数えられる。
●「悪魔の辞典」
ピンカートン探偵社の探偵を主人公にしたウィアードウェスタン風の伝奇アクション。
あとがきを見ると沢山人を殺す事にチャレンジされたものだったらしく、バカ映画的ノリのドタバタ風な銃撃戦がクライマックス。一歩間違ったらギャグに成る手前で踏みとどまっている所が美事。
Ambrose Bierceにも絡められているので彼の創造したHasturが関わって来るのかと想っていたら関わって来るのはCthulhuの方で、結局Bierceは「悪魔の辞典」の作者と云う以外、何も無かった・・・。
●「贖罪の惑星」
自殺志望者を吸収していく新興宗教から始まるホラー。この種の宗教は実在していて、南米のガイアナだったかで集団自殺した宗教は、いまだ記憶に新しい。しかしそれだけで終わらないのが、本作。最後は人々に自滅を促す新種のGreat Old Oneと思しき存在が出現する。名前は明らかにされていないが(多分、山田先生、考えておられない)このGreat Old Oneを巡る続篇を、出来れば長篇で読んでみたい。
●「石に漱ぎて滅びなば」
まだ夏目漱石に成る前の夏目金之助が絡む(主人公ではない)ロンドン綺譚。Cthulhu Mythと云うよりLovecraftのとある作品の続篇的な作品。スパイものの味わいも有る。想えば「クトゥルフ少女戦隊」の前の企画は夏目漱石や石川啄木らが主役の予定だったのだが、恐らく作者には明治の文人に対する想い入れが有るのだろう。
●「戦場の又三郎」
宮沢賢治の「風の又三郎」の続篇。「風の又三郎」の語り手の嘉助は大人に成り戦場で戦車の形を取った何かおぞましいものに遭遇する。しかし、彼以外の人間には、それは普通の戦車にしか見えておらず、只、巫女の家系の女性だけは何か感じている様子だった。そして戦場で再開した唯一の上級生の一郎にも、嘉助と同じものが見えていた。あの日、又三郎との遭遇を経験した彼等だけが、普通の人間には見えないものを見る事が出来るのだ。
本作のCthulhuもLovecraftの描いたCthulhuではなく、「銀の弾丸」と同じく(そして恐らく「クトゥルフ少女戦隊」も)作者独自のCthulhu。
  • ZEPHYROS
  • 2017/12/22 (Fri) 01:33:12
返信フォームへ 
珠玉の短篇集
日本で2番目のクトゥルー作品として一部に伝説的な短篇『銀の弾丸』をタイトルに掲げ、山田正紀のクトゥルー神話ものを中心とした珠玉の短篇集。

中心とした……と記したのは、明確にクトゥルーとは言えないものも含まれているからだが、テイストは同じものかと思う。

さて。本当に珠玉なのだ。そして、初出を見ても、実にばらばらで、日頃文芸誌を愛読している人なら、
「あ、これは読んだ憶えがある」
というものがたとえば一篇あったとして、収録されている全編が既読という事はなかなか難しいのではなかろうか。

内容もバラエティに富んでいる。たとえば『銀の弾丸』は日本の冒険小説風な展開で、異形の能楽によってクトゥルーが召喚される事を阻止しようとする男の物語。アイデアもさることながら、その展開ぶりが実に壮大で、正直、伝説的短篇の名に恥じないだろう。
クトゥルー神話の生まれたアメリカの作品を絶対に凌いでいると思う。

『悪魔の辞典』、これはメキシコで失踪して死の真相がわからないアンブローズ・ビアスの事件に絡み、ピンカートン社の調査員が窃盗団やマフィア、メキシコの反乱軍などとくんずほぐれつ、ある本を争うハードボイルド。

『贖罪の惑星』は大変ミステリアスだ。アルプスの山麓に室町時代からあるという、「滅びてしもう教」の村と、帰らずの森。その森と浅からぬ因縁のある主人公が、プロの狩猟家と、UFOのコンタクトマンと共にいどむ事になるが、その森の樹木はことごとく異様に赤く染まり、奥へ行くほど古鱗木が増え、さらには……。
次第にミステリアスになっていく、いや、サスペンスフルになっていくといってもいい雰囲気は、読むほどに浸れる。

『戦場の又三郎』は、沖縄戦の物語。又三郎といえば勿論、宮沢賢治の『風の又三郎』だ。沖縄戦では、多数の北海道・東北出身の兵が戦ったと伝えられている。民間人の女たちを後方へ護送するため、孤軍奮闘する岩手出身の若い巡査と、負傷した軍医。ふたりが見たものは又三郎と、そして異形の怪物的戦車だった!
その戦車をクトゥルフと名付けるに至った、米兵の背嚢に入っていたウィアード・テイルズ……というあたりも、美味しい。
  • とら
  • 2017/12/29 (Fri) 19:01:18
返信フォームへ 

返信フォーム





プレビュー (投稿前に内容を確認)
  

Template by  マシマロック